このアルバムが発売されたのは1972年、ぼくが中学二年生のときだった。彼らにとってのみならず、ぼくにとっても、はじめて買った二枚組のレコードだった。三千円という出費は、中学生にとっては取り返しのつかない額なので、買う前にずいぶん迷ったおぼえがある。聴いてみてつまらなかったらどうしよう。そのときは「面白い」と思えるまで聴き込んで、無理やり元を取るしかない。
悲壮な決意で買ったレコードだが、すべては杞憂だった。ぼくは一発で、このレコードが大好きになった。ます一曲目の「ロック・オフ」が素晴らしい。イントロのかっこよさでは、ストーンズの全曲のなかでも一、二を争うだろう。そのあとも言うことなしの歌と演奏がつづく。スリム・ハーポやロバート・ジョンスンの見事なカバーを聴くと、彼らが当時、まだ三十歳前の若者であったことに、あらためて驚かされる。
レコードでは四面、それぞれ微妙に色合いが変わる。とくにB面は、リラックスした雰囲気のアコースティック・サイドになっている。また二枚目が、キースの「ハッピー」ではじまるのもよかった。彼がリード・ヴォーカルをとる曲は、これまでにもあったが、シングル・カットされたこともあり、やはりこの曲の印象が強い。
フリークスの写真をコラージュした白黒のジャケットもインパクトがあった。ぼくの買ったアルバムには、おまけにポストカードが付いていたが、これはうれしいようなうれしくないような、微妙なものだった。(2012年2月)