まぐまぐ日記・2012年……(9)

まぐまぐ日記
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2月27日(月)曇り・晴れ

 昨日に引きつづき「木霊」に手を入れる。まだ見通しが立たない。時間切れで気功教室へ出かける。

 午後は父が入所している施設の定期面談。これは三ヵ月に一度、担当者よりケアプランなどの説明を受けるものだ。今日は久しぶりに、一階のロビーで父と面会することができたが、すぐ二階に上がると言って愛想がない。いまのところインフルエンザの発生は確認されていないので、このままいけば三月上旬には面会禁止は解除になるとのこと。

 夕方、再び「木霊」に取り組む。夜は剣道。

2月28日(火)曇り・雨

 午前中、小説の仕事をつづける。

 午後から車で大宰府へ。参拝して古いお守りやお札をおさめる。梅を期待していたが、今年は気温が低いせいか、例年よりも開化が遅れているみたいで、まだちらほらといった感じだった。

 九州国立博物館で「細川家の至宝」展を観る。鎧兜や刀剣といったものにはあまり興味はないが、白隠の禅画が何点か見られたのは収穫だった。豪快な達磨像などが有名だが、かなり写実的な絵も残しており意外だった。

 夜は山鹿温泉に宿泊。山鹿は灯籠で有名な、山間の長閑な温泉地。ゆっくり温泉につかって保養する。

2月29日(水)晴れ

 いい天気になった。気まぐれに車を走らせながら福岡を目指す。高速を使うと2時間くらいで着いてしまうので、車の少なそうな一般道を選んでてれてれ走る。しかし結局、久留米に出てしまい、あとは面白味のないコースを帰ることになった。

 今日は剣道が休みなので、夜は『007 ロシアより愛をこめて』を観る。ショーン・コネリー主演のシリーズ第二作で、監督はテレンス・ヤング。以前は『007/危機一髪』という邦題だった。ケースの解説には「スパイ映画らしいシリアスな展開」とあるが、どこが? いま観ると、お気楽な娯楽映画といった趣き。かえって『カジノ・ロワイヤル』の八方破れの馬鹿ばかしさの方が、新鮮に感じられる。

 このDVDには日本語吹き替えも入っていて、ボンドの声は若山弦蔵。おお、懐かしい。ナポレオン・ソロの矢島正明とともに、忘れられない声優さんだ。あとは野沢那智(アラン・ドロン、『ナポレオン・ソロ』のイリヤ・クリヤキンなど)、山田康雄(クリント・イーストウッド、ルパン3世など)ってとこが、ぼくらの世代には懐かしいですね。

3月1日(木)雨・曇り

 引きつづき「木霊」に手を入れる。なんとか地道に進めている。

 このところ長くパソコンを見ていると、目が疲れて字が見えにくいことが多い。視力が衰えているのかもしれない。とくに雨や曇りの日が調子悪いみたいだ。あまり仕事をするなということだろう。

 『グレイトフル・デッドにマーケティングを学ぶ』(日経BP)を読みはじめる。糸井重里が紹介した本だ。デッド・ファンのぼくとしては、ほとんど知っていることばかりだが、彼らのやってきたことをマーケティングの観点から評価する、というところが興味深い。

3月2日(金)雨

 なんとか「木霊」の手直しを終えて、つぎに進む。去年書いた『彼女の本当の名前』と交互に読み進めているが、やはり後半に近づくと粗が目立ってくる。かなり手を入れる必要あり。

 午後、生協へ買い物に行ったついでに、近くの名島神社へ久しぶりにお参り。以前は毎日のように散歩にでかけていたところだ。子どもたちが小さかったころには、家族でもお花見などにもよく来た。ここも梅はまだほとんど咲いていない。雨も降っているので、お参りだけして帰る。

 夜は剣道。『カラマーゾフの兄弟』を拾い読み。いつものように引き込まれて、長々と読んでしまう。父・フョードルの人物造形が見事なことに、あらためて感心する。昔はイワンの知性に惹かれたが、いまはフョードルや長男・ドミートリーのような生命力に溢れた人物を魅力的だと思う。またドミートリーに辱められる退役二等大尉(スネギーリョフ)などの脇役も、じつによく書けている。これら屈辱にまみれた人物たちが、いかに深い精神性を隠しもっているかを、何気ない庶民的な会話のなかに描き込んでいて感心させられる。

3月3日(土)晴れ・曇り

 午前中、「劫火」の手直しにかかる。

 午後は矯正管区にて剣道。帰ってから『カラマーゾフ』のつづきを読む。今日はイワンがアリョーシャを相手に長々と語る「反抗」と「大審問官」のところ。ここは間違いなく、この長大な小説の最大の山場だ。ぼくがかつてイワンに惹かれたのも、罪のない者たちの悲惨はいかにして償われるか、という彼の議論に魅せられたからだった。とくに「反抗」は、読むたびに心打たれる。

3月4日(日)雨

 午前中、「劫火」をつづける。

 午後は友人がやっている学習塾で、中学3年生を相手に作文指導。ぼくは6年ほど前まで、ここで講師をしていた。引退した現在も、O君が声をかけてくれるので入試前に作文指導だけさせてもらっている。生徒にしてみれば、「なんだ、このヘンなおじさんは?」といったところだろう。O君の心づかいである。

 夜はスコセッシの『カジノ』を見る。ラスベガスのカジノをめぐる、デ・ニーロとジョー・ペンのシリアスなやりとり。そこにシャロン・ストーン扮する、金にも男にも薬にもだらしない、どうしようもない女が絡んでくる。あいかわらず上手いなあ、スコセッシ。もちろんデ・ニーロやジョー・ペンの演技も上手いけど、この映画の敢闘賞はストーンだろう。まさに色と欲に溺れる女を好演している。