12月1日(木)曇り
今日から十二月。いろいろあった一年も、あと残すところ一ヵ月。原発事故、ヨーロッパの経済危機……様々な面で、世界の破局が近いことを実感させられた一年だったように思う。来年はどんな一年になるのだろう。あまり明るい見通しは立たないが、こういうときこそ気持ちは明るく、前向きに生きたい。
『愛についてなお語るべきこと』を再開したものの難航している。舞台はタイ北部の農村に移るが、なにしろ行ったこともない土地のことを書こうとしているので、無理があるのだ。
12月2日(金)晴れ・曇り
『愛についてなお語るべきこと』、これまでに書いた部分を読み返し、第五章以降の構成を変えることにする。いまは第八章まで進んでいる。かなり大幅な手直しになりそうだ。いつもそうだけれど、ぼくの場合、最初の設計図通りにいかないことが多い。たいてい途中で、何度もプランを練り直しながら書き進むことになる。だから連載は苦手だし、一つの作品は完成までに時間がかかる。
先日買ってきた『エドガー・ソーテル物語』を読みはじめる。ハードカバーで750ページ近くある。楽しみだ。
12月3日(土)雨・曇り
昼、両親を招いて父の誕生会をする。父は11月25日で86歳になった。今年はオーストラリアに行っていたので、一週間ほど遅れてのお祝いである。11月25日は三島由紀夫が自決した日でもある。「わしの誕生日になんてことをするんだ」と父が言っていたのを思い出す。当時、父は45歳だったわけだ。
夜はフランク・キャプラの『スミス都会へ行く』を観る。この映画も主演は、ジェームズ・スチュアートとジーン・アーサーのコンビ。ストーリーもほとんどワンパターンなのだけれど、なぜか飽きない。それぞれに、いい映画だなあと思う。
12月4日(日)曇り
今日は福岡市東区の少年親善剣道大会。審判を仰せつかる。剣道も習っている子どもの数が減り、ぼくの息子たちが出場していたころにくらべると、大会も寂しくなった。
来年からは中学で武道が必修になる。何を選択するかは学校長の裁量にまかされており、アンケート調査では柔道を予定している学校が7割、剣道は2割くらいらしい。きちんとした指導者がいないところで、中学生に柔道を習わせるのは危険である。大きな事故が起こらなければいいのだが。剣道は防具を揃えなければならないという理由で敬遠されるのかもしれないが、木刀を使っても、充分に剣道の基本は教えることができる。礼法をはじめとして、相手を尊重する姿勢など、いまの中学生に学んでほしいことがたくさんあるんだけどな。たとえば剣道の試合では、一本取ったあとにガッツポーズをしたら、その一本は取り消しである。そういった礼節を、剣道を通して一人でも多くの中学生が身につけてくれることを願っている。
夜は東区剣道連盟の忘年会。いつもの場所で二時間余り、大いに飲み、大いに語る。和気藹々として楽しい宴会だった。
12月5日(月)晴れ
午前中、気功。夕方までずっと仕事をする。久しぶりに小説に没頭している。『愛についてなお語るべきこと』の第五章から第七章まで、だいたい修正を終えた。全体の流れやバランスを俯瞰するために、こういう作業は短時間で集中的にやる必要がある。
夜は剣道。『エドガー・ソーテル』は半分くらいまで進む。ちょっと助走が長過ぎる気がする。あちこちにスティーブン・キングの影響が見える。
12月6日(火)晴れ・曇り
午前中は仕事。夕方から家内と天神に出て、夕食を済ませてからアクロス・シンフォニー・ホールにて讀賣交響楽団の講演を聴く。指揮は小林研一郎である。コバケンは六月に九州交響楽団でシベリウスの二番を聴いている。このときのシベリウスは違和感があって乗れなかった。ぼくのイメージと違っていただけで、演奏自体は悪くなかったのかもしれないが、最終章などはブラームスの一番みたいだと思った。
そのブラームスの一番が、今日のメイン・プログラムである。コバケンとは相性がいいに違いない。ということで楽しみだ。前半のプログラムは、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲。あまり面白い曲ではないが、ソリストのヴァスコ・ヴァシレフがなかなかの熱演。オーケストラも巧い。とくにフルートとクラリネット、オーボエなど木管のトップは本当に巧い。弦はピアノからメゾフォルテくらいの音域が美しい。コクがあってしなやか。一人一人の技量の高さがうかがえる。
休憩を挟んで、いよいよブラームスだ。第一楽章は力が入り過ぎて、ちょっと音が固くなっていたが、第二楽章からは良くなった。あいかわらず木管が美しい音色を聴かせる。ティンパニが巧いので演奏が締まる。弦も言うことなし。それだけにホルンが弱いのがちょっと残念。でもフィナーレまで楽しめた。やはりコバケンには合っている曲だなと思った。軽くビールを飲んで帰る。