アフター・コロナ(2)

アフター・コロナ
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 エア・ビー・アンド・ビー(Airbnb)などのマッチング・サイトがやっていることは、「余っているモノ」と「必要な人」をいかに結びつけるかということだ。インターネットの登場によって、こうしたマッチングが格段に容易になった。そこで様々なビジネスが生まれる。マッチング・サイトを構築する際に大切なことは、変数をできるだけ少なくすることだ。たとえばAirbnbなら「部屋の貸し借り」、ソーシャル・ファイナンスなら「資金運用」というように、テーマやキーワードを絞り込む。使われる変数は、せいぜい滞在期間と人数と予算、あるいは融資額と返済期間と利率くらいである。変数が少ないからマッチングが容易になる。人と人が結び付きやすくなる。

 ネット社会の到来によって、お互いを知らなくても、「持っているもの」と「欲しいもの」とが効率よく結びつくようになった。その際に、彼や彼女がどんな人間(人格)であるかといったこととは捨象されている。ソーシャル・ファイナンスの場合、交換される情報は融資が必要な背景や個人の信用度などである。全人的につながるのではなく、必要最低限のつながりが構築される。趣味を交換するのであれば、ワレリー・アファナシエフの演奏とか、エスニック料理のレシピとか、ある部分で無理なく弱くつながる。

 実際に相手と顔を合わせる必要はないから、「引きこもり」などは解消されるかもしれない。マイノリティ同士のつながりが顕在化することによって、マイノリティであることの意味は失われる。性格の悪さ、暗さ、消極性といった、個人を特徴づけるネガティブな要素は相対化されるだろう。これらはインターネットがもたらすプラスの面、ネットワークで人と人がつながった世界の光の部分と言えるかもしれない。

 一方で、イスラム国などがインターネットを通して世界中の若者にジハードへの参加を呼びかけているのも、ネットワーク化した世界におけるマッチングの機能を、うまく利用している例と言える。そこでは同じ性向や傾向をもつ人たちが、「イスラム」というキーワードや「ジハード」というテーマによって、強くしなやかにつながる。ネットワークを通してマネー(資本)やデータ(情報)が世界を駆け巡るように、テロリズムも世界を駆け巡る。新型コロナ・ウイルスは、そんなふうにして世界を駆け巡っている新しいかたちのテロリズムではないだろうか。(2020.5.18)

Photo©小平尚典