今年の春、シュギー・オーティスの突然の来日には驚いた。もうずいぶん長く、彼の名前を耳にしなかった気がする。
アル・クーパーとのセッションに参加し、天才ギタリストと謳われたのは十五歳のとき。七十年代のはじめにエピックから発表した三枚のアルバムは、いずれも傑作だ。ところがその後、まったく新作が出なくなる。どうやら売り上げ不振から、レコード会社が契約を打ち切ってしまったらしい。長いブランクのはじまりである。
このアルバムは希望に満ちたソロの第一作。クーパーとのセッションではギタリストとしての才能にスポットが当てられていたが、ここでは彼の天才的な音楽性がよりトータルに紹介されている。弱冠十七歳にして、ギターの腕前は完成されている。加えて、ベースやキーボードなどの楽器をこなすマルチ・プレイヤーぶり、曲作りの良さ、アレンジの斬新さと、本当に溢れんばかりの才能だ。さすがにヴォーカルはまだ青いが、それも初々しい魅力となっている。
音楽的な背景はブルースなのだろうが、それにとどまらずファンクや後のフュージョンにつながる要素ももっている。さらに同時代のシンガー・ソングライターとも相通じる、繊細で内向的な雰囲気も。それが後の長いブランクを暗示している気もする。
二十歳くらいで第一線を退いた人なので、四十年のブランクがあったといっても、まだ六十歳だ。最近の写真を見ると、いい顔をしている。年齢を重ねた彼の新作を、ぜひ聴きたいものだ。(2010年7月)