なお、この星の上に(8)

 夕方の搾乳を終えて家に入ろうとすると、庭の井戸に祖母が蝋燭と水を供えていた。健太郎が牛の乳搾りを日課にしているのと同様に、彼女は毎夕、井戸に供え物をして手を合わすことを欠かすことがない。井戸には水の神さまが棲んでおられ […]

なお、この星の上に(7)

3  健太郎の一日は牛の乳搾りからはじまる。バケツに搾った生乳は金属製の容器に入れ、リヤカーで近くの集配所に運ぶ。これが毎朝の日課だった。夕食の前にも、もう一度乳搾りが待っている。休みの日でも関係ない。搾乳を怠ると、牛は […]

なお、この星の上に(6)

 結局、その日は昼近くまで猟をつづけたけれど、これといった成果を上げることはできなかった。武雄の強力なゴム管も、雑木林に残っている葉をいたずらに散らすばかりで、獲物に命中することはなかった。だいいち獲物らしい獲物に遭遇す […]

なお、この星の上に(5)

 季節が進んで彼岸花の赤も色褪せた。リンドウの紫の花が土手を飾るころになるとキノコ採りがはじまる。主役は村の年寄りだが、休みの日には大人も子どもも山に入る。そんな折に、山のなかを走りまわるジープの姿が、しばしば目撃される […]

猫が死んだ

 猫が死んだ。ぼくのかわいい猫が死んでしまった。心臓の鼓動が弱くなり、ゆっくりと間遠になっていき、ひとつ大きく息をすると止まってしまった。自分で最期の場所と定めた寝室のソファの下から、猫は真っ黒い大きな目でぼくを見つめた […]

4 春には花の苗を植えて

 今年の冬は寒さが厳しく、雪もたくさん降ったりして、なかなか手ごわかった。梅も水仙も、例年にくらべて開花が遅れているとか。でも三月を過ぎると、さすがに暖かい日も増えてくる。朝六時ごろに起きてカーテンをあける。東の空が白っ […]

なお、この星の上に(4)

 山の棚田を過ぎると、それまでの砂利道から土だけの道になった。まわりの木々の様子も、明るい雑木林から、植林された杉や檜の林に変わっていく。針葉樹が生い茂った林は暗く、その横を通る道までがひんやりとしている。清水が湧き出し […]