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23 ロック・ミュージック、生涯の5曲!

 今日は日曜日なので、ロック・ミュージックのなかから、ぼくの生涯の5曲を選んでみようと思う。緊張するなア。だってロックを聴きはじめて40年、ロック・ファンとしての人生がかかっているからね。二週間くらい考えに考えた。あれも入れたい、これも入れたい。迷いに迷った。断腸の思いで、以下の5曲を選んだ。では発表しよう。

  1. Out On The Weekend~Neil Young(Harvest/1971)
  2. It Makes No Difference~The Band(Northern Light-Southern Cross/1975)
  3. Moondance~Van Morrison(Moondance/1970)
  4. Dixie Chicken~Little Feat(Dixie Chicken/1973)
  5. Black Cow~Steely Dan(Aja/1977)

 良くも悪くも、これがぼくにとってロックという音楽だ。しかも5曲とも、はじめて聴いたのは高校から大学にかけて。そこでぼくという人間の骨格は出来上がったということなんだろうな。では一曲ずつコメントしていこう。

 このニール・ヤングの曲を聴いたのは、中学を卒業して高校に入学するまでのやや長い春休みのある日だった。渋谷陽一さんのラジオ番組で「アフター・ザ・ゴールドラッシュ」を聴いて(平田良子さんがゲストだった)、速攻でレコード屋さんへ走ったが、あいにくアルバムはなく、次善策としてお店に入っていた『ハーヴェスト』を買ったのだった。一曲目の「週末に」を聴いた瞬間、「これは自分のための曲だ」というリアルな実感があった。それは初恋にも似た体験だった。重いドラムとベースのリズム、ギターの刻みに導かれて、物憂げなハーモニカが出る。つづくニールの歌もアンニュイだ。それに絡むベン・キースのスティール・ギター。なにもかもが、ぼくの好みのフィーリングだった。ここから本格的に、自分の好きな音楽を探しはじめた気がする。

 生涯愛するザ・バンドのアルバムは、『アイランズ』も含めて全部好きで、どれか一曲を選べというのは最初から無理なことはわかっている。今回は円熟期の「同じことさ」を選んだ。曲と演奏、リックのヴォーカル、ロビーのギター、ガースのサックス、すべてが最高だ。そういう曲は彼らの場合、ざっと20曲くらいはあるのだけれど、本日はこれを。はじめて聴いたのは高校二年生の二学期、季節が冬に向かうころで、寒い夜に炬燵で勉強をしながら繰り返し聴いた。『ラスト・ワルツ』での演奏はさらに名演で、聴くたび(観るたび)に言葉を失う。そのザ・バンドのメンバーも、いまはロビーとガースが残っているだけ。リックとリヴォンとリチャードは、ぼくの心のなかの宝物置き場に行ってしまった。

 ヴァンの「ムーンダンス」のカッコよさをなんと表現すればいいだろう。フォービートで軽快にうたっている(ちょっとシナトラみたい)のに、どんなロックよりもロックを感じさせる。『アストラル・ウィークス』は不思議なアルバムだったが、こちらはジャジーな感じがさらにうまく消化されている。それにしてもアルバムのA面5曲はどれも超名曲で、全曲のメロディを口笛で吹ける。『ムーンダンス』というといまだにA面の印象しかない。ところでヴァンといえば、ザ・バンドの『カフーツ』に入っている「4%パントマイム」でのリチャード・マニュアルとの掛け合いが忘れられない。『ミュージック・ヒストリー』に入っている未発表ヴァージョンはさらに生々しくて気絶しそうになる。また『ラスト・ワルツ』での「キャラヴァン」も最高のパフォーマンスだ。本当に彼らには、いくら感謝しても感謝し足りない。あなたたちのおかげで、ぼくの人生はどれほど豊かになったかしれません。

 ザ・バンドとリトル・フィートとスティーリー・ダンが、ぼくの好きなバンドのベスト3である。もちろんビートルズやストーンズは別ですよ。彼らは世界遺産みたいなものですから。「ディキシー・チキン」をはじめて聴いたときには、これがどういう音楽なのかよくわからなかったけれど、ただひたすらカッコいいと思った。そのうちに「ディキシー」はディキシーランド・ジャズのディキシーではないかと思うようになった。するとニューオリンズか。すでにザ・バンド経由でアラン・トゥーサンの名前はインプットされていた。また久保田麻琴さんから、「セカンド・ライン」なんて言葉も入ってきていた。このころからぼくはライ・クーダーなどを聴いて、どんどんワールド・ミュージックの世界に入り込んでいくことになる。その入口で聴いた曲ということになる。その後、『ウェイティング・フォー・コロンバス』が出て、あらためて彼らに惚れ直すとともに、タワー・オブ・パワーのホーン・セクションのカッコよさに腰を抜かすことになる。なかでも「スパニッシュ・ムーン」は最高の名演だ。

 最後はスティーリー・ダン。彼らは初期のバンド形態でやっていたころと、フェイゲンとベッカーのユニットとなって、ゲイリー・カッツのプロデュースで作った『エイジャ』や『ガウチョ』などとでは、かなり印象が異なる。この「ブラック・カウ」は初期のアーシーな作風と、後期のオシャレで洗練された楽曲群と、両方のいいところをあわせ持った曲だと思う。ドラムはポール・ハンフリーで、ガットやバーナード・パーティらにくらべるとやや地味。テナーをトム・スコットが吹いているのもちょっと意外。やっぱりショーターのイメージが強いんだよね。ホーン・アレンジもトム。このホーンはカッコいいです。もう40年近く聴いているけど、あらためて聴くとフェイゲンのヴォーカルはさすがに若いなあ。それと彼らの女性コーラスの使い方は本当にうまい。女性の声をこんなふうにクールに響かせることができるのは彼らだけだ。「ディーコン・ブルース」や「バビロン・シスターズ」なんかもそうだよね。

 どうでしょう? この5曲で、ぼくとしては思い残すこところはない。本当にいいロック人生だったと思う。これからも、まだまだ素敵な音楽に出会っていくと思うけれど、すでに出会ったものだけでも、100万回生きた猫の気分だ。ロックを好きになってよかった。ロックと出会えてよかった。初恋の人と一生を添い遂げる気分で、今日もぼくはロックを聴いている。(2019.6.2)