なお、この星の上に(15)

7  緑が深くなっている。早春を賑わわせた野草、フキやゼンマイ、ツクシ、ワラビなどの季節は終わり、草花は夏へ向かう準備をはじめている。小さな花の蜜を求めて、蝶たちが飛び交っている。そろそろ冬眠から目覚めたクサガメやヒキガ […]

第1回 小説とはどのようなものか

【はじめに】  後期は主に小説というジャンルをとおして文学の話をします。小説とはどのようなものか? どんなことが、どのように書かれているのか? 過去の作品を例にとりながら具体的に考えていこうと思います。これが一回の授業の […]

なお、この星の上に(14)

6  霧は霊気のように森を覆っていた。黒々とした森のなかを、風は静かに吹いている。澱んだ静寂とともに霧は掻きまわされ、取り払われた霧のなかから、シダや蔦に絡みつかれた森の木々が姿を見せた。木々の根元には落ち葉が厚く降り積 […]

なお、この星の上に(13)

 山頂の神社の近くに健太郎がはじめて目にする権現滝がある。切り立った褐色の岩壁を、水は垂直に勢いよく落ちている。水しぶきのかかるところに深緑色の苔が生えていた。春先に雨がつづいたせいか、かなりの水量があるようだった。高さ […]

なお、この星の上に(12)

 いつのまにか平坦な尾根に出ていた。かなり標高が高くなっている。日当たりのいい場所でひと休みしていくことになった。各自が思い思いの場所に腰を下ろし、持ってきた水筒の水を飲んだ。日はすでに高く昇り、足元には暖かな木漏れ日が […]

小説のために(第四話)

 前回のアップが4月25日だから、4ヵ月以上のご無沙汰でした。その間に『なにもないことが多すぎる』(小学館)が刊行され、これについては長々と言い訳じみたことを書いた。この9月には早くも、つぎの作品『新しい鳥たち』(光文社 […]