30 二人は別れてしまったけれど

ネコふんじゃった
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 イギリスのフォーク・ロック・バンド、フェアポート・コンヴェンションの中心メンバーだったリチャード・トンプソンが、バンドを脱退した後に奥さんのリンダと結成した夫婦デュオの、これはラスト・アルバムにして最高傑作。
 リチャードの個性的なギター・プレイとソングライターとしての才能は、フェアポート時代から高く評価されていた。しかしバンドはしだいにトラディショナルな色合いを強め、イギリスやアイルランドの民謡などを多くレパートリーに取り入れるようになる。そのあたりが不満だったのか、デュオになってからはリチャードのオリジナルが中心になる。このアルバムも、すべて彼の曲で固められている。
 それにしても、アイデア溢れるリチャードのギター・プレイは素晴らしい。常套的な弾き方をしているところは、一箇所もない。フェアポート時代から自家薬籠としていたケルト音楽の要素に、パンク・ニューウェイブの風味も加わり、独自のロック・アルバムに仕上がっている。全八曲を、夫婦で半分ずつうたっている。これもフリートウッド・マックみたいでいい。私生活での危機を抱えていたせいか、全体に暗めだが、最後の曲などは、どこか吹っ切れた印象もある。
 このアルバムを最後に夫婦は離婚、デュオも解消。リチャードはその後もクオリティの高い作品をコンスタントに発表しつづけている。一時期、不調を伝えられたリンダも、去年は久々にソロ・アルバムを出して、元気なところを見せてくれた。(2008年5月)