12 天才たちの青春賦

ネコふんじゃった
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 季節が冬に向かう時期、朝起きてまず、このCDをかける。一曲目の「ブライト・サイズ・ライフ」を聴くと、今日もいいことがありそうな気がする。いや、今日もいい一日にしようと思う。
 パット・メセニーとジャコ・パストリアス。二人の若き天才ミュージシャンの、一期一会の競演盤。曲の冒頭、メセニーが弾くフレーズの、なんと魅力的なことか。それだけで、このアルバムが名盤だということがわかる。ギターの音色もフレージングも、すべてが新鮮だ。
 さらに驚きだったのが、ジャコのベースの音だ。こんな音が、この惑星に存在することを、それまで誰も知らなかったのだ。やがてウェザー・リポートに迎えられた彼は、ジョニ・ミッチェルのアルバムなどに数々の名演を残しながらも、しだいにドラッグに溺れ、ホームレスのような生活をしながら、最後は街のチンピラに殴られて三十五年の生涯を閉じる。
 そんな悲劇的な結末を、このアルバムから予感することは難しい。パットもジャコも、ほどよい緊張感のなかで、ひたすら音楽を楽しんでいるように聞こえる。つぎからつぎへ斬新なフレーズが溢れ出てきて、どの曲も一気呵成に駆け抜ける。このとき音楽の女神は、二人に微笑みかけていたに違いない。
 天才の名をほしいままにしたミュージシャンにも、一瞬の輝きというものはある。それをあからさまに記録するという点で、レコード(CD)は残酷な媒体だ。さあ、心して、今日も音楽を聴こう。(2006年12月)