32 中学生がもらった一枚のはがき

 中学三年生の夏休みに、街のレコード屋さんから一枚のはがきが届いた。裏側に写真が印刷されていて、ストリート・ギャングみたいな柄の悪いお兄さんたちがこっちを睨んでいる。なんなんだ、この人たちは。
 それはレコード会社が作ったプロモーション用のはがきで、写真に写っている人たちは「ウォー」というバンドのメンバーだった。前年に全米ナンバーワンにもなったアルバムを、日本でも売ろうと考えたのだろう。それにしても、このあいだまでビートルズを聴いていた中坊に、東芝さんもムチャしよりますなあ。
 そんなわけで、ぼくが彼らのレコードを聴いたのは大学生になってからだ。『世界はゲットーだ』と、その前後の『オールデイ・ミュージック』、『ライブ』の三枚は本当にカッコよかった。アース・ウィンド&ファイヤーやオハイオ・プレイヤーズといった同時期のファンク・バンドにくらべて、どこか無骨でダークな感じだった。はがきの写真そのまま、ストリート感覚の音というか。楽器編成はドラム、ベース、ギター、キーボードに、パーカッション、サックス、ハーモニカ。とくにリー・オスカーのハーモニカが、バンドの大きな個性になっている。
 「戦争!」という看板を掲げつづけるのは、本人たちも大変だったのだろう。やがてバンドは平和路線に転換していく。それにともなって、ぼくも彼らのレコードを聴かなくなる。しかしソウル、ジャズ、ラテンなど、様々な音楽をブレンドしたこの時期のサウンドは、いま聴いても説得力がある。(2008年6月)