23 秋にはJTのアルバムを一枚ずつ聴いてみる

 最初に買ったジェイムス・テイラーのアルバムが、この『ワン・マン・ドッグ』だった。中学三年生の秋である。ビートルズが設立したアップル・レコードからデビューするものの、セールス的には振るわず、新たにワーナー・ブラザーズと契約を交わして再デビュー。これはワーナーからの三作目にあたる。
 当時、JT氏に冠されていたキャッチフレーズは、「銀色の声」というものだった。そう言われてみれば、たしかに……きらびやかな金色の声ではないし、シャウトもほとんどしない。しっとりと落ち着いた、インテリ系の声である。そのあたりが血気盛んな中学生には物足りなかったのか、以後、しばらくは新作から遠ざかってしまう。
 再び聴きはじめたのは十年ほど前から。そのころ発表された『アワーグラス』というアルバムがとても良かった。二十五年間の空白を埋めるように、CDで少しずつ集めていった。どれも素晴らしい。曲、演奏、アレンジ。なにより聴き手の方が、「銀色の声」がしっくりくる年齢になったということかもしれない。
 当たり外れのない人なので、ベストを上げるのは難しい。『ゴリラ』や『イン・ポケット』もいいし、コロンビアに移籍してからの作品も充実している。できれば最初から一枚ずつ聴いてみることをお勧めする。美青年の趣があったデビュー時から、急速に髪の毛が後退していくジャケット写真に、人生を感じるだろう。とくに秋の深まる、これからの季節にはぴったり。なんたって「銀色の声」だからね。(2007年10月)