19 今年は三十一回忌

 「夏の日の恋」でおなじみのパーシー・フェイス。ジャンルでいうとムード・ミュージックやイージー・リスニングといったくくりになるかと思う。しかしヨーロッパ音楽からはじまり、ミュージカル、ラテン、映画音楽、さらに晩年にはキーボードやコーラスを大々的に導入し、サンタナの「ブラック・マジック・ウーマン」などロック・ナンバーまで取り上げてしまう果敢な姿勢は、ときにミスマッチの観は拭えないものの、「イージー」とは程遠い、天晴れなものであった。
 彼が癌のために六十七歳で亡くなったのは一九七六年のこと。したがって本当は去年が三十一回忌なのだが、なぜか今年になって「没後三十周年企画」ということで、代表作が十点ほど紙ジャケットで発売された。これはそのなかの一枚。パーシー・フェイスというと、きらびやかなブラス・アレンジの印象が強いが、ここでは金管も木管も使わずに、ストリングス(とピアノ、ハープ、ヴィブラフォン)だけで流麗な演奏を聞かせてくれる。
 とにかく弦楽器の音が美しい。一九五九年の録音とは思えない、水の滴るような艶やかな音である。その妖艶な音色は、ウィーンフィルなど、戦前のヨーロッパのオーケストラを思わせる。またビブラートをきかせて歌い上げるところは、怪しいまでに耽美的で、マーラーやワーグナーと錯覚しそうになる。ベストは三曲目の「ローラ」だろうか。他にも「テンダリー」「ムーラン・ルージュの歌」「ひき潮」など、名曲名演ぞろいである。(2007年6月)