第5回 SF映画を観ながら、「未来」について考えてみよう

 今回は何本かのSF映画を観ながら、人間の未来について考えてみます。いつの間にか映画や小説が描く未来は暗く悲観的なものになってしまいました。前回の人工知能のところでも出てきたように、人類の滅亡を予測する学者や金持ちもいます。
 ぼくが小学生のころ(1960年代)は、図画の時間に明るい未来都市の絵を描いたりしていました。科学技術はどんどん進歩し、人々の暮らしは便利で豊かになり、誰もが平和で幸福に暮らすことのできる世界になる……それが普通の感覚でした。思えばアポロが月に行く時代だったのだなあ。
 なぜ、こんなことになったのでしょう。明るい未来を返せ! ということで、そのあたりのことを一緒に考えてみましょう。

1 『2001年宇宙の旅』とコンピュータ
 遠い昔、ヒトの祖先(ヒトザル)が他の獣たちと変わらない生活を送っていたころ、黒い石板のような謎の物体(モノリス)が彼らの前に出現する。やがて1匹のヒトザルが謎の物体の影響を受け、動物の骨を道具・武器として使うことを覚えた。獣を倒し多くの食物を手に入れられるようになったヒトザルは、反目する別のヒトザルの群れに対しても武器を使用して殺害し、水場争いに勝利する。歓びのあまり、骨を空に放り上げると、これが最新の宇宙船に変る。
 月に人類が住むようになった時代。合衆国宇宙評議会のヘイウッド・フロイド博士は、月のクレーターで発掘された謎の物体(通称「モノリス」)を極秘に調査するため月面基地に向かう。調査中、400万年ぶりに太陽光を浴びたモノリスは強力な信号を木星に向けて発した。
 18ヵ月後、宇宙船ディスカバリー号は木星探査の途上にあった。乗組員は船長のデビッド・ボーマンとフランク・プールら5名の人間(ボーマンとプール以外の3名は出発前から人口冬眠中)と、史上最高の人工知能HAL9000型コンピュータである。
 順調に進んでいた飛行の途上HALは、ボーマン船長にこの探査計画に疑問を抱いている事を打ち明ける。その直後、HALは船のユニットの故障を告げるが、実際に調べてみると問題はなかった。二人はHALの異常を疑い、その思考部を停止させるべく話し合う。これを察知したHALが乗組員の殺害を決行する。プールは船外活動中に宇宙服の機能を破壊され、人工冬眠中の3人は生命維持装置を切られてしまう。ただ一人生き残ったボーマン船長はHALの思考部を停止させ、探査の真の目的であるモノリスの件を知ることになる。(スタンリー・キューブリック監督、1968年)

2 『ブレードランナー』とレプリカント
 2019年、地球環境の悪化により人類の大半は宇宙に移住し、地球に残った人々は人口過密の高層ビル群が立ち並ぶ都市部での生活を強いられていた。宇宙開拓の前線では遺伝子工学により開発された「レプリカント」と呼ばれる人造人間が、奴隷として過酷な作業に従事していた。レプリカントは、外見上は本物の人間と全く見分けがつかないが、過去の人生経験が無いために「感情移入」する能力が欠如していた。ところが製造から数年経てば彼らにも感情が芽生え、人間に反旗を翻す事態にまで発展した。しばしば反乱を起こし人間社会に紛れ込む彼等を「処刑」するために結成されたのが、専任捜査官「ブレードランナー」である。
 タイレル社が開発した最新レプリカント「ネクサス6型」の男女6名が人間を殺害し脱走、シャトルを奪い、密かに地球に帰還し潜伏していた。人間そっくりなレプリカントを処刑するという自らの職に疑問を抱き、ブレードランナーをリタイアしていたデッカードだったが、その優秀な能力ゆえに元上司ブライアントから現場復帰を強要される。捜査のためにレプリカントの開発者であるタイレル博士に面会に行くが、タイレルの秘書レイチェルの謎めいた魅力に惹かれていく。
 レプリカントを狩ってゆくデッカードだが、やがて最後に残った脱走グループのリーダーであるバッティとの対決のなかで、彼らが地球にやって来た真の目的を知ることになる。(リドリー・スコット監督、1982年)

3 『ガタカ』と遺伝子工学
 遺伝子操作により、優れた知能と体力と外見を持った「適正者」が数多く存在する近未来。知力体力に優れる「適正者」たちは、当然、教育課程においても社会においても優位だった。一方、自然妊娠で生まれた「不適正者」たちは「適正者」に劣る存在だった。両者の間には社会レベルでも個人レベルでも大きな隔たりがあった。
 主人公ヴィンセントは、両親の軽はずみな性交渉により「不適正者」として産まれた。弟アントンは「適正者」だった。子供のころから「適正者」の能力を目の当たりにし、弟を含め「適正者」たちには決して勝つことができなかった。そんなヴィンセントが抱いた夢は宇宙飛行士になることだった。しかし宇宙飛行士は「適正者」のみに許された仕事で、「不適正者」には夢のまた夢。なれる可能性など少しもなかった。
 大人になっても夢を抱きつづけるヴィンセントに転機が訪れる。あるDNAブローカーの仲介で、「適正者」の生体IDを入手することができたのだ。その「適正者」は元水水泳選手ジェローム・モローで、金メダル候補だったが、事故により脚の自由を失い選手生命を絶たれたのだった。ヴィンセントはジェロームの生体ID(血液や指紋など)を買い取った。違法な生体偽装をしてジェロームになりすまし、晴れて宇宙局「ガタカ」の局員となった。「適正者」の女性アイリーン・カッシーニとの出会いもあった。ヴィンセントは度々行われる生体認証を切り抜け、数々の訓練でも「適正者」に劣らないよう必死の努力を重ね、その結果、ついに念願のタイタン探査船の宇宙飛行士に選ばれた。
 探査船の出発が間近となったある日、ヴィンセントの上司が何者かによって殺された。この思いもよらない事件がヴィンセントを窮地に追い込む。なぜなら、事件現場で発見されたまつ毛は「不適正者」ヴィンセントのものだったからだ。警察の捜査にヴィンセントは正体の発覚を恐れながらも、「適正者」の振りをつづけた。探査船の出発が延期も中止もされないところまできて、宇宙局長ジョセフが犯人であると自供した。ヴィンセントの上司は身分詐称の罪を告発しようとしたが、宇宙局長は身分詐称を不問にし、ヴィンセントを飛行士にしようと、船の出発まで沈黙を守っていたのだった。
 難局を乗り切ったヴィンセントは、船に乗り込む直前、抜き打ちテストで生体IDの提出を要求された。手元にジェロームの生体IDはなかった。最後の最後で夢を絶たれるかに思われたが、レイマー医師はヴィンセントが「不適正者」だと知っていた。レイマー医師から「自分の子どもがあなたを英雄だと思っている」と告げられた。医師の計らいでヴィンセントは探査船に乗り込み、宇宙へ旅立った。(アンドリュー・ニコル監督、1987年)

4 『トゥモロー・ワールド』と人類滅亡
 西暦2027年11月。人類は希望を失い、世界は恐慌状態におちいっていた。なぜか出産の能力が失われ、18年間にわたってまったく子どもが生まれないのだ。世界各国が内戦やテロによって壊滅するなか、英国は軍事力で徹底的に抑圧することにより秩序を維持していた。
英国には世界中から大量の不法移民が押し寄せ、日に日に治安は悪化していた。世界最年少の青年がアルゼンチンで刺殺されて絶望に包まれたこの日、ロンドン市街地で爆破テロが発生し、英国エネルギー省に勤めるセオはすんでのところで難をまぬがれる。
 翌朝、セオは出勤途中に反政府グループ「フィッシュ」に拉致される。首謀者はかつての妻ジュリアン。彼女の要求は、ある不法滞在者の「通行証」を手に入れることだった。渋りながらも、セオは従兄で文化大臣のナイジェルから通行証を手に入れる。検問所を突破するためジュリアンと共に乗り込んだ乗用車で、セオが引き合わされた不法滞在者は若い黒人女性のキーだった。
 検問所に向かう途中、セオたちの車は暴徒の襲撃に遭い、ジュリアンが撃たれて絶命する。組織のアジトに逃げ込んだセオは、キーから衝撃の事実を告白される。実は彼女は子どもを身ごもっており、間もなく出産を迎えるというのである。そしてジュリアンを引き継いでリーダーとなったルークが、キーの子どもを政治利用するためにジュリアンを殺したことを知ったセオは、キーを連れて命がけの逃避行を開始する。
 警察とフィッシュの双方から追われるなか、古くからの友人であるジャスパーや元助産師のミリアムが自ら犠牲となることで、セオとキーは不法移民を装って収容所に匿われ、キーはそこで女の子を出産する。ところがフィッシュがキーを取り戻すために侵入し、軍隊と激しい戦闘となる。セオは辛うじてキーと赤ん坊をボートに乗せて、彼女らを引き取ることになっている「ヒューマン・プロジェクト」との待ち合わせ場所まで漕ぎ付ける。しかしセオはすでに被弾して重傷を負っており、そのまま生き絶える。やがて「ヒューマン・プロジェクト」の船がたどり着く。(アルフォンソ・キュアロン監督、2006年)

 いや~、どれもいい映画ですね。無駄なコメントは挟まずに、できるだけ長く映画を観てもらいました。それでも各作品とも、全体の四分の一ずつくらいしか上映できませんでした。興味をもたれた方は、どうぞDVDを借りるなどして観てください。有名な映画ばかりなので、簡単に観ることができると思います。
 それと宿題です。今日観た範囲でいいですから、どれか一つの作品について感じたこと、考えたことをレポートにして提出してください。全体の感想のようなもので結構です。

次回予告
 週末から二週間ほどアメリカへ行ってきます。ロサンジェルスとサンフランシスコのあいだを、友人のフォトグラファーと二人、レンタカーで旅する予定です。次回はその話をしましょう。途中、シリコンバレーにも立ち寄り、グーグルやアップルなどを見てくるつもりです。なぜ太平洋に面した狭いエリアで、世界有数のIT企業がたくさん生まれたのか。そのあたりの謎に迫れればと思っています。無事に帰国できることを祈っていてください(-^〇^-)。