ぼく自身のための広告(7)

7 友だちのCD……②
 高校時代からの友人、山本浩司くんが選曲・構成したCD。今日は内容をご紹介しよう。一曲目はジェイムス・テイラー、曲が「きみの笑顔」で「おやっ」と思ったのは、彼の場合、やっぱりワーナーのイメージが強いから。そうか、これはソニーミュージックの音源を使ったコンピレーションだったのだな。「きみの笑顔」が収録されたアルバム『JT』はCBS移籍第一作。ジャケットの写真は、JT史上もっともハンサムなショットではないだろうか。
 ぼくが最初に買った彼のアルバムは『ワン・マン・ドッグ』で中学3年生のとき。ほぼリアルタイムだった。そこから『マッド・スライド・スリム』『スイート・ベイビー・ジェイムス』と遡っていった。『ゴリラ』や『イン・マイ・ポケット』など、後のアルバムはCD化されてから紙ジャケで揃えた。はじめて買ったアルバムということもあって、いまでも『ワン・マン・ドッグ』にいちばん愛着がある。とくに裏ジャケットの写真にはしびれた。上の段にセクションのメンバーとのホーム・レコーディングの風景。下は屋根裏みたいなミキシングルーム。コンソールの前にはプロデューサーのピーター・アッシャーも写っている。もう、かっこいいったりゃありゃしない。音もいい。アコースティックな音の広がりをよくとらえた名録音だと思う。
 つづいてジェフ・ベック・グループの「今宵はきみと」、ディランの曲ですな。もちろんロッド・スチュワートとロン・ウッドのいた第一期もいいけど、ぼくはボブ・テンチがヴォーカルを務める第二期がいちばん好き。キーボードはマックス・ミドルトンだしね。ところがベックにはアルバムを2枚作るとバンドを解散させるという悪い癖があって、あっさりつぎのベック・ボガート&アピスに行ってしまう。まあ、これはこれですごいんだけどね。ジミ・ヘンドリックスの「見張り塔からずっと」もそうだけど、このころからぼくたちのあいだでは、「ディランの曲はカバーのほうが数百倍かっこいい」という評価が定着することになる。
 そのディランの「運命のひとひねり」、名曲です。というか、この曲が収録された『血の轍』は「ブルーにこんがらがって」とか「イディオット・ウインド」とか、もう名曲満載なのです。ぼくが最初に買った彼のアルバムは『フリーホイーリン』で中学3年生のとき。面白いと思ったのかなあ? その後も『時代は変わる』『アナザーサイド』と発売順に半ば苦行のように買いつづける。そして高校一年の夏、ザ・バンドとのライブが出る。打ちのめされた、ディランではなくザ・バンドに。それからはもうロビー・ロバートソン一筋、リチャード・マニュエル命、もちろんリックとレヴォンとガースもね。『ビッグ・ピンク』を聴かなければ、大学で農学部には行かなかったかもしれないってくらい、本当に人生が変わりました。音楽の力ってすごいね。
 まだ3曲か。あと11曲も残っている。こんな調子ではいつまでも終わらないぞ。少しペースを上げよう。4曲目はトム・ヤンス。このアルバムは今回はじめて聴いた。プロデュースにローウェル・ジョージがかかわっているらしい。そのせいだろうか、ちょっとジョン・セバスチャンの『Tarzana Kid』を思い出しました。以上。つぎのレス・デュークははじめて聴いた。オールマン・ブラザース・バンドのサポート・メンバーと解説にあって、へえっと思いました。ジミー・メッシーナの『オアシス』は完全にフュージョンですな。彼が在籍していたポコは大好きなバンドで、いまでもときどき聴きます。
 7曲目、ガーランド・ジェフリーズ。この選曲にはびっくり。泣きました。アルバムが発売された当時、『ミュージク・マガジン』でレビューを担当されていた鈴木慶一さんが「『エスケイプ・アーティスト』ってタイトルがいいよね」と書かれていて、当時、慶一さんは他人とは思えないほど何から何まで好みが合ったので、ぼくは速攻でレコードを買いに行った。こんなところで再会できるとは。プリファブ・スプラウトは『スティーブ・マックイーン』と『ヨルダン』くらいしか聴いていない。つづいてロイ・オービソンの「オンリー・ザ・ロンリー」。なぜ? トラベリング・ウィルベリーズもみんな亡くなって、ディランだけになっちゃいましたね。
 ローラ・ニーロとジャニス・ジョプリンはいかにも山本くんの好みだなあ。サイモンとガーファンクルの「アメリカ」はうれしいSACD化。彼らの曲では、これと「フランク・ロイドライトに捧げる歌」が好きです。最後はヴァレリー・カーターの「ウー・チャイルド」。この曲が収録されたアルバム(邦題は『愛はすぐそばに』)、いまはメッシーナの『オアシス』と同じように、フュージョン・クロスオーバーの名盤として聴かれているようです。たしかにリトル・フィートにアース・ウィンド&ファイヤー、ジェフ・ポーカロ、チャック・レイニーと異種格闘技みたいに兵どもが勢ぞろいしている。さらにジャクソン・ブラウン、ジョン・セバスチャン、リンダ・ロンシュタット、デニース・ウイリアムスまで参加していて、いったいどうなっているんだろう? しかもプロデュースとエンジニアはジョージ・マッセンバーグ、いい時代だったのですね。1977年の作品。
 70年代のソニーというと、ぼくなどはまずサンタナを思い浮かべるけど、ちょっとテイストが違うかな。先に名前が出たEW&Fもそうですね。看板アーティストとも言うべきスプリングスティーンが入ってないのは音源の使用許可が下りなかったのだろうか。あとアル・クーパーとスティーヴィー・レイ・ヴォーン、それにスライも入れてほしかったなとか、これはもう言い出したらきりがない。
 いつも音楽があった。うれしいときも悲しいときも。人を想うときも、想いに破れたときも。いつもぼくの人生には音楽があった。若いときに聴いた音楽は、いまもそのままある。59歳のぼくのなかに、10代や20代のぼくが生きつづけている。
 そんなことに、あらためて気づかせてくれた山本くん、ありがとう。